2026年3月11日、一般社団法人日本アップサイクル協会は、JAF(日本自動車連盟)九州本部にて「トレジャーハンティング」を実施しました。
今回のプロジェクトは、役目を終えたJAFのロードサービス隊制服をアップサイクルし、新たな価値を持つプロダクトとして再生させる産学連携の取り組みです。JAFのロードサービス隊員、香蘭ファッションデザイン専門学校の学生・卒業生、そして縫製会社のリフォーム三光サービスが一同に介し、素材が持つ可能性を深く掘り下げました。
「何を作るか」ではなく「何があるか」を探す。
私たちが「トレジャーハンティング」と呼ぶこのワークショップは、単なる素材選びの時間ではありません。アップサイクルにおいて最も重要なのは、「何を作るか(プロダクト)」を考える前に、まず「素材そのもの」と徹底的に向き合い、その背後にあるストーリーや物理的な特性を理解することです。
JAFの制服は、過酷な現場で隊員の安全を守るために設計されています。高い耐久性、夜間でも視認性を確保するリフレクター(反射材)、そして象徴的なブルーとオレンジの配色。これらはすべて「安全の象徴」としての機能を果たしてきました。今回のトレジャーハンティングでは、これらの要素をどう次のプロダクトへ引き継ぐかが焦点となりました。

隊員の言葉から見えてきた「多くの現場の記憶」
ワークショップの見どころは、実際に制服を着用して現場に立つ隊員の方々と、制作を担う学生・そして縫製を担う職人との対話でした。
隊員の一人は、制服の「傷み」についてこう語りました。 「ロードサービスの現場では、車の下をのぞきこんだり、アスファルトに膝をついたりする作業が日常茶飯事です。だから、膝や肘の部分が真っ先に擦り切れてしまうんです。オイル汚れも、洗っても落ちないほど染み込みますが、それは私たちが誰かを助け、現場を完遂した証でもあります」
この言葉を受け、香蘭ファッションデザイン専門学校の学生たちは、新たな視点を見出しました。 「通常のアパレルでは『汚れ』や『擦れ』は不良品ですが、このプロジェクトではそれこそが一点物のストーリーになります。オイルの染み跡をあえてデザインのアクセントとして残し、隊員の活動の記憶を可視化させたい」


素材の特性を活かすクリエイティブな検証
実際に素材を手に取った参加者からは、技術的な視点に基づいた具体的なアイデアが次々と飛び出しました。
- リフレクター(反射材)の再定義: 隊員の命を守ってきた反射材。これを「夜間の歩行者の安全を守る」という文脈に置き換え、サコッシュやバックパックのパーツとして活用する案が出されました。
- 耐久性の転用: 「非常にタフで厚手の生地なので、PCケースやアウトドア用のツールバッグなど、耐久性が求められるアイテムに相性がいい」と、リフォーム三光の職人からも量産化を見据えたアドバイスがありました。
- ディテールの再構築: 制服のポケットやペン差し、さらには識別タグやJAFのロゴをあえて外さずににそのままデザインとして活かすことで、「元々制服であったこと」を語りかけるプロダクトにする方向性が示されました。


産学連携がもたらす社会実装への道筋
本プロジェクトは、単なるリメイク品の制作で終わるものではありません。
- JAFロードサービス隊: 物語の源泉となる素材と現場の知見を提供。
- 学生・卒業生: 既成概念に囚われない自由な発想と、社会課題解決への熱意。
- リフォーム三光サービス: 熟練の縫製技術による「製品」としてのクオリティ担保。
- 日本アップサイクル協会: 全体のコーディネートと、循環型のビジネスモデル構築。
学生が描く「理想のデザイン」に対し、縫製のプロが「この厚みの生地をどう縫い合わせるか」という技術的フィードバックを行う。この実戦的なプロセスを経て、実際にマーケットで手に取ってもらえる「商品」としてのアップサイクルを目指します。


次のステージへ:物語の続きを作る
2026年3月11日。この日のトレジャーハンティングによって、廃棄されるはずだった制服は、未来を支える資源へと定義し直されました。
「社会を守ってきた制服を、次世代と未来を支える資源へ」
このスローガンのもと、プロジェクトは今後、学生によるデザインの具体化とプロトタイプの制作へと進みます。素材に刻まれた隊員たちの誇りと、若いクリエイターたちの感性が混ざり合ったとき、どのようなプロダクトが生まれるのか。
日本アップサイクル協会は、これからも「もったいない」を「新しい価値」へと変える挑戦を続けてまいります。


企画・運営: 一般社団法人 日本アップサイクル協会
協力: JAF九州本部 / 香蘭ファッションデザイン専門学校 / 株式会社リフォーム三光

