「広島=牡蠣」の裏側にある課題
広島といえば、やはり真っ先に思い浮かぶのが「牡蠣」ではないでしょうか。
全国有数の生産量を誇る広島県では、毎年多くの牡蠣が食卓を彩っています。一方で、その裏側では大量の「かき殻」が発生し、その行き場に悩まされていることはあまり知られていません。

この未活用資源をなんとか有効活用しようと、70年以上にわたって取り組み続けているのが、広島県に本社を構える「丸栄株式会社」です。
今回は、丸栄株式会社さんのアップサイクルな商品・事業をご紹介します。
自然素材と調和する「貝適空間」の魅力

かき殻を「捨てるもの」ではなく「活かすもの」として位置づける丸栄株式会社が生み出したのが、「貝適空間」です。この商品では、かき殻を用いた塗材を使って、室内をより心地よく整える「快(貝)適空間」づくりを提案しています。
「貝適空間」で用いる塗り壁材は、かき殻に含まれる豊富なミネラルが調湿性を高め、部屋の湿度バランスを整えることで、ジメジメしがちな梅雨もカラッと快適に、乾燥する冬はしっとりと過ごせます。
また、その優れた通気性はカビを抑え、自然由来の成分が気になるニオイの軽減にもひと役買っています。さらに、やわらかなマットな質感は室内光を上品に反射し、まるで自然の中にいるような穏やかさを演出していますね。
「自然素材の家に住みたい」「環境にも配慮した選択をしたい」といった気持ちを持つ方にぴったりな、上質でやさしい空気感をつくり出しているのです。

かき殻が紡ぐ多彩なアップサイクルビジネス
「貝適空間」は、丸栄株式会社が展開するアップサイクルビジネスのほんの一部です。その根底には、「かき殻」という地域資源をさまざまな角度から活用し、循環型の仕組みを広げていきたいという想いがありました。
加工したかき殻から生まれる有機石灰肥料は、農地の土壌改良に役立ち、野菜や果樹を健やかに育む土づくりに最適です。かき殻飼料では、鶏の卵殻を強化し、生産性を向上させるために有効です。さらに、広島大学との協働でかき殻を活用した環境改善事業にも取り組まれています。この取り組みでは、有害な硫化水素を吸着して無害化するかき殻の特徴を最大限に活かし、有無や河川の底の硫化水素を低減し、生物の生息が大きく回復、水産資源の健全な循環も支えています。

このように、丸栄株式会社は、廃棄物のはずだったかき殻を「必要とされる原料」へと変え、環境・産業・暮らしを結びつける「かけ橋」として活動を続けています。
地域に根ざした循環型モデルのこれから

丸栄株式会社の取り組みは、単なる再利用にとどまらず、モノ本来の良さを引き出し、新たな価値や魅力を付与していくという、まさにアップサイクルなアプローチといえないでしょうか。
地元で大量に発生するかき殻を研究し、試行錯誤を重ねてきたからこそ、こうした多面的なビジネスモデルが築かれたのかもしれません。
広島の人々にとって身近な存在である牡蠣が、壁材として室内を快適にし、畑や海、そして家畜や魚たちの暮らしを支え、人間社会と自然環境をつなぐ役割を担うようになるのは、とても不思議で、どこか温かな気持ちになりませんか。
家づくりやリフォーム、日々の生活で「もう少し環境にも配慮した選択をしてみたい」と考える方は、ぜひ「貝適空間」に目を向けてみてください。環境や地域を支えながら、自分たちの暮らしにもやさしい選択があることを実感できるかもしれません。
かき殻から生まれる新たな価値が、私たちの日常にやわらかな彩りと、持続可能な未来へのヒントをもたらしてくれそうですね。
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